尾張瀬戸駅から歩いて3分ちょっと。
くねくねとしたアーケード商店街の「せと銀座通り商店街」に、「尾張屋」さんという乾物屋さんがある。かつお節をはじめ、煮干し、さば、あじ、鯛とちょっとめずらしい削り節があり、と〜〜〜っても、おいしいのです。お店を切り盛りする森 宏子さんは、背筋がピンっと伸びて、ハキハキとお話されて、かっこいいお母さんといった感じ。だしソムリエで知識も豊富。宏子さんにおすすめされた商品だと、どんどんほしくなっちゃう。そんな働く人の鏡のような存在。お店の歴史から、お店や商店街に対する想いをおうかがいしました!

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ここのお店はね、うちのおじいちゃんが結婚して、世帯持つときに、はじめたの。その当時は、「瀬戸にいかんで、どこへ行く」といわれるぐらい、九州をはじめ、全国から人がやってきてね。おじいちゃんに、「なんで熱田神宮の方でやらんかったの?」と聞いたら、熱田とは比べ物にならんくらい瀬戸がすごかったって。私が小学生ぐらいの頃は、日曜日になると、商店街に人がいっぱいで迷子になる。妹が見えないぐらいで、大人の背中を見ながら、トランシーバー買ってもらって、「もしもし?」とかいって遊んで。この近くに6軒も映画館があったし、私は顔パスで通れたの。芝居小屋の延長みたいな、座布団の上に座ってみるようなの映画館もあったよ。削り節屋さんも、商店街に4軒、5軒あったしね。

ここは繁華街だったの。1日と15日にお給料もらえるから、1日にもらったら、1日に使っちゃう。15日もらったら、また15日に使っちゃう(笑)。私が後を継ぐことにしたのは、小さい頃から「ひろこちゃんは商売上手だね」と褒められることが多くて、調子づいて継いだようなものなの。23歳で結婚して、それからずっと。

商売って大変なんだけど、楽しいの。
毎月24日は「節の日」にしていて、先月はね、若い女子4人が来てくれて、まー、楽しくってね! 血合いの部分が赤っぽいところと、ピンクの感覚のところと2色になってたのを見て、かつお節の“バイカラー“とかいって、上手にたくさん削って、持っていってくれたよ。わたしたちが小さいときは、親がごはんをつくってるときに、かつお節を削ることが子どもの日課で、いやでいやでしょうがなかったのよ。それが、今だとキャッキャいいながら、またやりたーい! おいし~とかいう姿を見て、わたし、これが楽しくって商売を続けてるんだな、と思ったの。出汁をとるのは、面倒くさいかもしれないけど、香りが全然違う。もうちょっと簡単に出汁がとれるようにそれも提案しないと。

ちょっと前までは、どうやってこのお店を閉めていくのか考えてた。でも、隣のお洋服屋さんの「noveRuga」のかなちゃんもいつも頑張ってるし、目の前の空き店舗も、若い人たちが改装をはじめたり。このあいだ商店街の店主が講師になる「まちゼミ」で、「食堂おせつ」を開く管理栄養士のせっちゃんにお願いして、一緒に活動したりね。そういうことをしているうちに、「尾張屋」の名を継ぐ訳ではなくても、もしも誰か乾物屋をやりたい、といってくれた子に継いでもらっても、先代に恥じないんじゃないかしら? と思い始めて。私で終わりにしよう、と思わないでおこうと思った。まだがんばろう! って、思い返したの。

若い子に対抗するわけじゃないけど、思い切ってのれんも変えたし、商品も新しいものを取り入れてるの。最近、市場での仕入れが楽しくって。今までは決まったのを買ってすぐ帰る、だったんだけど、ちょっと早めに起きて、いつも行かないところへ行く。そうすると、当たりはずれはあるんだけど、商品に幅が出てきたの。いつかわたしが亡くなって、天国か地獄からかわからないけど、あの世からでも銀座通りをみてるよ。地域に育ててもらったし、ここまでこられたのは、ご近所さんのおかげ。シャッター商店街が多いなか、銀座にはまだ水は流れている。

瀬戸の街の魅力は、ものだけじゃなくて人。いい人、悪い人じゃなくて、個性みたいなもの。人にお客さんがつく、と思う。今は、これからおもしろくなっていく、という気持ちがある。昔みんなで「わくわく、ドキドキ瀬戸銀座」って、キャッチコピーを作ったのよ。いま、それよ! 先輩たちが地道にそういうことをやってきてくれているから、続いている。いろんな人のいろんな思いが詰まっている街なので、根底を知りながら続いていくといいな。

 

尾張屋
住所:愛知県瀬戸市朝日町29
電話:0561-82-2406
営業時間:10時~19時
定休日:水曜日

 

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