愛知県瀬戸市内で、明治から続く洋菓子店「Patisserie EISENDO 瀬戸店」。2007年に発売された『品野ロール』は、地元では多くのひとが選ぶ瀬戸の手土産として、定着しています。とってもきめ細やかでなめらかな「EISENDOプリン」も、人気ですね。瀬戸店の店主・伊藤笑美子さんにお話をお聞きして、改めてその魅力をお届けします! お菓子のお城のような外観が目印です「Patisserie EISENDO 瀬戸店」は、瀬戸の中心市街地からすこし離れた、水野というエリアにあります。見た目は可愛らしく、お菓子の城のような佇まいです。店内は広く、入ってすぐにはギフトにぴったりな焼菓子が並び、その奥のショーケースには、常時30種類から40種類もの生菓子が並んでいて、いつも人で賑わっています。[写真:EISENDOプリンに生クリームを絞った「シャンティープリン」と「ダージリンティ」]カフェスペースもあり、こちらでショーケースに並ぶケーキをはじめ、季節ごとのパフェ、紅茶などのドリンクをいただくことができます。明治時代、品野に和菓子店として誕生「Patisserie EISENDO」のはじまりは、品野というエリアの248号線沿いにある「栄泉堂」。明治時代に、柏餅やお赤飯をつくる和菓子店として誕生しました。3代目が、瀬戸市内にある和菓子店と洋菓子店の両方で修業したことから、和菓子だけではなく、洋菓子も販売されるようになっていったといいます。現在のオーナーは、4代目・伊藤俊男さん。高校生のときに後を継ぐことを決め、名古屋市内の製菓学校へと進学し、卒業後は岐阜県岐阜市を中心に7店舗を展開している洋菓子店「ル・スリジェダムール」さんで4年ほど働きます。その後は、さらに腕を磨きたいと横浜にある「デフェール」へ。 今、TBSテレビ『ジョブチューン』の審査委員としてもよく登場される、安食雄二さんに憧れ、修業に出たのです。(安食さんは、現在は「sweets garden YUJI AJIKI」代表)また、奥様で、現在「Patisserie EISENDO 瀬戸店」店主を担当する伊藤笑美子さんは、俊男さんと製菓学校時代に出会い、卒業後は愛知県半田市の洋菓子店へ。俊男さんが「デフェール」で働くことが決まると、代表の安食さんから声がかかり、販売スタッフとしてともに働きはじめます。長く修行するつもりだったものの、数年働いた時に、3代目であるお父さんの体調を崩してしまいます。さらに笑美子さんの妊娠が重なり、2007年におふたりは瀬戸に戻ることを決意したのです。「Patisserie EISENDO」として新たに出発。名物をつくろうと、考案した「品野ロール」「戻ったら、お父さん、元気になりまして!」とにこにと笑顔を浮かべる、笑美子さん。4代目の俊男さんと笑美子さんが戻り、店名も「栄泉堂」から「Patisserie EISENDO」へ。新たな一歩を踏み出したのです。そこで、まず俊男さんが名物をつくろうと生み出した商品が「品野ロール」。いきなり大ヒットを生み出します。「品野ロール」は、しっとりとしてふわふわの柔らかい生地に、ほどよい甘さに生クリームたっぷり。真ん中に一本絞られたカスタードクリームがアクセントのシンプルな味わいです。けれども、生地そのもののおいしさと、クリームの量がほどよく、ひとりで半分ぐらいうっかり食べてしまうほどのおいしさです。「店の名物がつくりたいと思って。当時は『堂島ロール』のブームもあり、つくることにしたんです。オリジナルの箱も3,000枚つくって、お父さんに色が褪せるぞ! と心配されながら。でも、俊男さんと一緒に売るんだ、やっていくんだっという感じで踏み切りました」そんな決意のもとに出発したものの、実はしばらく最初はなかなか売れなかった。「そこから売れるようになったのは、夕方のテレビ番組や新聞に紹介いただいてから。特集で紹介されてから、わっと一気に注目が集まり、1日に最高約700本売れた日もありました。焼いて、巻いたものをすぐ売る。たこ焼き屋さん状態です(笑)。せっかくお買い求めに来ていただいたお客様に、商品がないのは申し訳ないという想いでつくり続け、これだけでも、手いっぱいだぞ、という日々が長く続きました」志高いパティシエが集まるお店へ俊男さんは、いくら売れても、ロールケーキだけでは流行りがあるからと、新たな商品の開発にも力を入れていきます。そこで、場所がすこし狭く感じるようになり、2013年に隣町の尾張旭店をオープン。品野にあった本店は「デフェール」一緒に働いていた、2個年下の後輩・塚田悠也さんをスカウトして、瀬戸店をお任せしたのです。塚田さんは、現在は静岡県浜松市で洋菓子店「エレグラント U 」のオーナーシェフ。2021年にフランスで開催され、世界11カ国が参加した洋菓子のワールドカップ「クープ・デュ・モンド・ドゥ・ラ・パティスリー」に日本代表チームのキャプテンとして出場し、準優勝されたというすごい方。「うちで働いてくれていた時に、コンテスト出場に向けて、飴細工を頑張っていて。その姿を見て俊男さんも刺激を受け、コンクールに目を向けるようになっていきました」2018年には、俊男さんが菓子職人が腕を競う「ジャパンケーキショー」で、味と技のピエスモンテ チョコレート部門で銀賞を受賞されています。その流れは続き、2022年には働いているスタッフの中から、約1,400名中で金賞1名(ピエスアーティスティック飴部門)、銀賞1名(バタークリーム仕上げ部門)、銅賞2名(味と技のピエスモンテチョコレート部門、ディスプレイ部門)を受賞されるなど、志高い皆さんが集まっています。地域で愛されるお店2019年には、品野本店は現在の水野エリアへと移転。笑美子さんが瀬戸店の店長となり、新体制で頑張っていらっしゃいます。おふたりが戻ってきて15年以上が過ぎ、スタッフの人数は、今では瀬戸店と尾張旭店合わせて18名。笑美子さんにお店でおすすめのケーキを教えていただくと、スポンジで作られたデコレーションケーキとのこと。誕生日のお祝いやクリスマスに、ホールケーキを選ばれる方もとても多いです。なお、ショーケースの中に、ひっそりと和菓子の栗羊羹が並んでいます。そちらは、今もファンが多いそうで、お父さんの安太郎さんが作りつづけています。和菓子店からはじまり、今では洋菓子店として、地域で愛されている「Patisserie EISENDO」。ぜひ一度、足を運んでくださいね!