尾張瀬戸駅からおよそ4km。瀬戸のなかでも山深い品野町の住宅街に、突如、自転車屋「せとしなのサイクル」が現れる。店内へおじゃますると、超専門的なスポーツバイクや専門的な部品が並ぶ横に、くつろげる居間があったり、アニメキャラクター“しなのちゃん”のジャージが販売されていたりと、ツッコミどころ満載。

品野といえば、瀬戸市民にとっては、ひたすら山でアップダウンのきついエリア。ママチャリで品野へ行った日には、もうへろへろ(笑)。ところが、この近くには“雨沢峠”なる勾配のキツイ峠があり、その峠を自転車で越えるためにわざわざやってくるサイクリストたちがいるというのです。店主の伊藤忠孝さんによって、いろいろな謎が解き明かされたので、お店のご紹介とともにお届けします!!

——「せとしなのサイクル」さんをはじめられたきっかけを教えてください。
伊藤さん:子どもの頃からずっと好きで、自転車に関わるお仕事ができたらいいなと思っていたんです。2005年の31歳のとき、瀬戸と長久手で開催された「愛・地球博」のとき、「自転車タクシー」に関わらせていただきました。会場内を走っていた、ふたり乗りできる、今風の人力車ですね。

それまでは自転車とは関係ないオフィス家具の搬送施工のお仕事をしていたのですが、「この仕事をやりたい!」と素直に思ったんです。万博で働けるということが魅力でしたし、自転車だし。こんなに楽しそうな仕事はない。そのときの会社に、ごめんなさい! 辞めますと伝えて退社しました。

——思い切って、好きなことを仕事にされたんですね。万博の後はどうされたんですか?
伊藤さん:自転車屋やりたいなと思って、まずは名古屋市内にある競技志向が強い自転車屋さんで働き始めました。2店舗目は、小牧にあるいろんな自転車をとにかくあつめている自転車屋さんで、次から次へと納車があるので、ひたすら組みあげていました。ママチャリの修理もあれば、レーシーな(競技用)自転車も入ってこれば。とにかくたくさん。

両方で5年くらいやっていました。そのときに、自分の好きなことをやる、という仕事の仕方を知って、すごく楽しかったですね。

——それにしても、品野の住宅街でなぜお店を開こうと思ったのですか? なかなかの込み入った住宅街ですよね(笑)
伊藤さん:僕の生まれは静岡県で、名古屋に住んでいたんです。でも、妻が瀬戸出身で、この店舗は妻のおじいさんが陶芸クラブを趣味でやっていた建物なんです。建物の上のほうをみると、煙突もありますよ。そういうえば、ここあるよね、と思い出し、ギアが噛み合ったみたいな感じですね。

妻も実は自転車タクシーのときに出会ったので、自転車屋を開くことは応援してくれました。でも、瀬戸、ましてや品野にサイクリストたちがいっぱい走りにくるという頭がなかったみたいで、「なんで?」 といわれましたね。

——わたしも不思議デス。ただ、確かに自転車に乗っている方をよく見かけるなーと思って、ずっと気になっていました。
伊藤さん:瀬戸には知る人ぞ知る「雨沢峠」があるんですよ。国道363の土岐の方へ抜けていく道ですね。愛知県では「西の二ノ瀬、東の雨沢」と呼ばれていて、長い坂道が続く。プロ選手やレースをされている方だと、雨沢峠のタイムを図って、実力を試したりします。一般の方はまさか、わざわざ自転車できつい坂をのぼりにきているとは思わないのかもしれませんが、それが魅力なんです。

あとは、2011年に道の駅「瀬戸しなの」ができて、初代の駅長さんが自転車大好きな方だったので、自転車好きが集まってきたことがきっかけであったんです。水野エリアの方には、元土砂採掘場を使った、オフロードバイクやMTB専用のバイクコース「スラムパーク」もありますしね。僕は自転車が好きな人が集まる場所を知っていたので、そんなに不安感はなかったですね。

——へ〜!!! いろいろ謎が解けました。今はお店にどんなところからお客さんがいらっしゃるんですか??
伊藤さん:おもに名古屋市内、春日井市内から訪れられる方が多いですね。10km、15kmぐらいなので、自転車で走って来るのに、ちょうどいい距離なんですよね。うちを目的に来てくださる方もいらっしゃいます。

——それにしても、すごく気になるのが、お店のなかに居間があるんですね(笑)。
伊藤さん:工房だった頃にガス窯も設置してあって、焼いている間、場所を離れるわけにもいかないので、ここで休憩したり、みんなで宴会したりもしていたそうなんですよ。その空間をそのまま活かしています。ここで出会って、仲良くなって、走りに行かれたりする方も多いですよ。

——アニメキャラ“しなのちゃん”が描かれたジャージ気になるんですが……
伊藤さん:看板娘ですね。設定をうちのほうで考えて、プロの漫画家さんに描いていただきました。三姉妹の末っ子設定です。お姉さんがトライアスリート、真ん中のお姉ちゃんはマウンテンバイクに乗っている元気っ子なんですね。しなのちゃんは三女で中学2年生。自転車が大好きで、土岐にいるおじいちゃんに会いに行くことが日課になっている。品野中の女の子なんですよ。

——ずいぶん詳細な設定ですね(笑)
伊藤さん:スポーツ自転車って硬派なイメージがあったので、アニメは相容れないものがあったと思うんです。でも、アニメ好きの方は、趣味に長けているんですよね。意外と全国から注文が入っていて、50、60着ぐらい全国にちらばっています。自転車屋さんがキャラクターつくってやっていることがあまりなかったので、注目していただいたのかな。妻が印刷屋さんなので、オリジナルでつくっています。

——最後に、瀬戸市民の方に向けてひと言お願いします。
伊藤さん:どんな方でも、ウェルカムです!自転車屋さんって、自分のところでチームを持っていたり、ともすると、閉鎖的になりがちになったりするんですが、どこの自転車買われた方でも、どんな自転車に乗っている方でも、来てくださいね!

居間にはコーラの冷蔵庫があって、お代は寄付制で来た人が、勝手に飲んでいく感じが、おもしろかったナ〜。ものすごくアットホームな空間で、伊藤さんが優しいので、スポーツバイク検討中の方はぜひ訪れてみてくださいませ。

DATA
せとしなのサイクル
住所:愛知県瀬戸市品野町4-1214
営業時間:平日は予約制。週末は8時半から18時半。祝日はお休み。

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