こんにちは。「喫茶NISSIN」の浅井梨歌です。実家の喫茶店の跡継ぎになり、5年目になりました。今年事業主も母からバトンタッチし、ますますお店の事で頭がいっぱいです。自己紹介でもお伝えした通り、お店を営む上で笑顔の日もあれば、落ち込んだり怒ったりする日もあります。お店が終わった後、同じ思いを感じていたりしている人と会って、話をすると、また明日も頑張ろうと思えるのです!『店主同士のオフト~ク』第1回目は、コロナ禍にインスタのDMを通じて、共に励ましあい、悩み合った「BAKESHOP mitten」店主の加藤有記奈さんと約2時間お話してきました。あまりにも長くなってしまいそうなので、前半は「窯元、喫茶店に生まれた私たちト~ク」、後半は「お店を営む私たちの葛藤ト~ク(仮)」と2部構成にしたいと思います。今回はそれぞれの家族とのかかわり方、現在に至るまでをお話ししています。喫茶NISSIN 梨歌(以下、梨) :記念すべき第1店舗目です。写真を撮りましょう。mitten 有記奈さん(以下、有):これしかできない。ピース。梨:いぇ~い。※今回は、編集長のほや子がカメラマン役で一緒に参加させていただきました(以下、ほ)本題にはいる前に。なぜ「mitten」に来たかというと。 梨:2019年に家業の喫茶店で働き始めて、ちょっと慣れてきた頃にコロナが来て、先行きが分からなくなってしまって。このままどうなってしまうかという気持ちに、同じ悩みを持つ「mitten」さんと励まし合えた事が「NISSIN」の思い出に刻まれている。接客、衛生面、人数制限……こういう場合どうしたらいいのかっていうのに、出口が見えない中で同じくらいの気持ちで悩み感を持っているのが有記奈さんだったんだよね。有:きっかけは、何だったかな? どっちかが多分毒を吐いたんですよ(笑)梨:たぶん私がゲロっと吐いたんですよ。「もう!無理じゃないですか、コロナ!」っていう感じでインスタにDMを送りました。そこからテイクアウトにするとか席数を減らすっていうのを連絡を取りながら相談して決めていたんだよね。有:NISSINさんもそうするならmittenも良いだろうって感じで。一人だけでやるよりかは相談して。励まされました。梨:NISSINとmittenさんの客層は違った雰囲気なのに、なんだかすごく共感できたっていうのが良かった。嬉しい事だったなと思います。有:コロナ対策もだし、接客って凄く難しいじゃないですか。コロナ前から私はちょっと苦手だった。梨歌さんも、結構悩みを抱えてやってるんだなっていう事を知って、私だけじゃないんだっていう。梨:お互いすごい似てる悩みがいっぱいあって。有:コロナ禍のときは、集まるなと言われて、人に愚痴も、悩みも言えないし。梨:うんうん。人との会話を遮断された状態で、店を開く。開く意味って何だろう? そんな気持ちになりましたよね。会えないけれど、DMで繋がってリモートで会話をずっとしてました。有:「NISSIN」さんもそうするなら「mitten」も良いだろうって感じで方針を決めて。一人だけでやるよりかは相談して。励まされました。梨:最近はちょっと希望も見えつつ、前を向けそうな気がしますよね。(マスクを取ってお喋り出来る日が来るなんて!)お店をはじめたきっかけ有:元々、ここは家の敷地の使っていないスペースだったんです。改築をしようというタイミングで、父が「お店をやってみない?」と言ったのが、きっかけだったんですよ。自分から何かやるっていうタイプじゃなかったから、今、こういう事やってるのが結構びっくり。仕事を辞めて、製菓の専門学校に行ってたんです。 梨:仕事を辞めて? 何してたんですか?有:某大手衣料品メーカーで働いていました。5年くらいかなぁ。 お父さんもお母さんも物作る仕事をしてるし、何かちょっとそういうのに憧れはあって。でも、自分で陶器をやるのは現実的じゃないかなって。大変さを知ってるじゃないですか。なので就職を。店舗スタッフとして働いていたんですが、接客よりも、売り場作りの方が好きでした。営業前と営業後はもう戦場で、開店までに品出しして全部掃除も終わって、朝礼やって、お迎えして。決まった時間までに完成させる。それが、みんなでつくり上げる運動会みたいで、結構好きだったんです。それもきっかけで、製造をやりたいって。ほ:製菓の専門学校へ通いはじめたのは、何歳の時だったんですか?有:えっと、27歳だったかな。1年間、通いました。梨:もうその時は「mitten」が始まることは、決まってた感じなんですか?有:まだです。卒業後に、パン屋さんに就職しました。勤めてからしばらくして、お父さんがそういう話をしてくれて。パン屋さんの仕事は、朝が早いので心配してくれたんだと思います。梨:私はNISSINを継ぎたいってお父さんに言った時に、すごく反対されたんですよ。ちょうど私も27歳の時に、喫茶店の勉強をしに行きたいっていう風に言ったら、お父さんは否定的で。「会社に行くのが嫌で辞めたいからって言う理由なら反対」と。それを説得するのに数ヶ月かかっちゃったんですよね。でも、間近でやっているうちに見ていたら、これなら任せられるかと認めてくれました。有:お父さんとお母さん、割と反対しないんです。反対しないし、何も言わない。お店をやる? ときっかけを作ってくれたのも、初めてで。「仕事を辞める」と伝えたのは、「せともの祭」の時に電話したんですよ!(注:20万人が訪れる瀬戸の窯元さんがもっとも忙しい日)梨・ほ:笑笑!そうなんだ。有:その時、お父さんは出店中で、そのタイミングで娘からの電話。娘めっちゃ泣いてるけど、「お客さん来ちゃったみたい!」って言ってて(笑)梨:そりゃ来るよ。せともの祭りだもん! 「窯元の娘と、喫茶店の娘」(mittenの店舗空間は統一感があり、だらしなさがなくきちんとしていているのは有記奈さんの大手衣料品店のキャリアあってこそだとわかりました)梨:お互いにお父さんとお母さんが家で仕事をしている状況で育つじゃないですか。どんな幼少期でしたか?有:家の敷地内に工房があるので、家に両親はいるんだけど仕事してるから、相手してもらえなくて。専業主婦の子のおうちが結構うらやましかった。梨:わかります! うちも家とお店が一緒なので、帰ってきたらいるんだけど、一緒には過ごせない。だから鍵っ子とかに憧れてました。学童にも行ってみたかった。私が学校から帰ってくる時間帯は、陶器関係の仕事終わりの奥様方が来ていて、すごく盛り上がってたんだよね。宴会みたいな感じになってて、喫茶店を通って、ランドセルを背負って、家の中へ入っていく。部屋でテレビ見て、お腹空いたら、喫茶店の扉から顔出して「お腹すいたー!」って叫ぶと、パンの耳がカリカリになったやつが出てくる、みたいな。家のお手伝いしてましたか?有:「眞窯」のお手伝いしたらお小遣いもらえるから、小学生の時は「窯入れ」やってました。器に釉薬を塗ると、底についたものを剝がさないと、窯入れする時にくっついちゃうんです。それで、剥がす作業をお父さんとやっていました。釉薬が塗りたてだと、指紋が付いちゃうから、乾いたタイミングで触らないといけなかったり、窯入れはとにかく大変。それをずっとやっていて、とにかくしんどかった。梨:めっちゃ疲れそう。でもやっぱり手伝ってたんだ。私はあんまり手伝った記憶がない。もう喫茶店のことなんてまるで見てない子。中学生の頃も、高校の頃も、まったく手伝ってなかったですね。有:私も「眞窯」なんて、と思ってましたよ。梨:子どもの頃はね、まぁ家ですもんね。有:そうなんです。窯入れなんて、冬は寒いし、夏は暑いし。梨:子どもながらに、きっとそう思いますよね。大変そうだとしか見えない。なんかそこに変化ありました? その大変そうだ、というところから。有:大人になってからですね。お父さんたちの仕事は、結構いい事なんだなって。お父さんたちが作った器が好きだな、と思い始めたのは最近です。20代の頃から。外に出てみないと、良さが分からなかったりする。大変なことをして、育ててくれたんだなと思って。梨:それはすごいわかります。自営業の親を持つ子どもは、ほんとに大変な中、育ててくれたんだなって思いますよね。〜トークは次回へつづく〜店主同士のオフト~ク、ここまでご覧いただきありがとうございます。慣れないインタビューに初めはドキドキでしたが、お話し始めたら女子トークに花が咲いたような感じで、取材という事を忘れるほどでした。この日にうっ憤も吹き飛んで、憂さ晴らしが完了してしまったので記事にするのが遅くなってしまいました。(NISSINのアサイーボウルをお土産に、mittenさんではクッキーを頂きました) DMのやりとりから年月が経ち、この日はマスクを外してお話しする事が出来ました。今でこそコロナはそこまでおびえる存在では無くなりましたが、初期のコロナの受け止め方は千差万別でした。家族とも価値観が異なる孤独感の中で、有記奈さんとのDMでのお喋りは、出口の無いトンネルを小さな光を灯し合って歩いた大事な時間だったと感じています。mittenさんに通い始めたころは、きちんとしたお店で可愛い美味しいお菓子を販売される素敵な有記奈さんと共通点はあるのかな? と思っていましたが、この日改めて窯元生まれの有記奈さんと、喫茶店生まれの私は家庭環境の共通点も多く感じられました。お互い両親の影響を受けて大きくなり、身近で見ていたからこそ大変な事や、手間暇かかっている事、毎日仕事を続ける大変さや難しさが、自営をする今理解できるし、外の世界から見てもやっぱりうちの商品や店って良いなと感じられているのだと思います。ただ、家族が近くにいる仕事場だからこそ言いやすいのか、「楽でいいね」とか「これは仕事じゃなくて道楽でしょ」と言う人がいます。めちゃくちゃ根に持ってます。恵まれたことに感謝し、日々の仕事を頑張っている人にそんなこと言わないでほしいです。最後に怒ってしまいましたが、トークは次回に続きます。投稿の感想があれば励みになると思いますので声をかけてください。お読みいただきありがとうございました!(有記奈さんがステイホーム中に作り続けていた推しの刺繍。没頭感半端ない)