“ツクリテ”が多く行き来する、地元の人が多く利用するアーケード商店街「せと末広町商店街」に、新たな拠点が誕生します!2023年2月オープンをめざし、元人気洋装店「ヴィーナス」が、飲食店やコワーキングが入る複合施設「瀬戸くらし研究所」へ。ここは住宅なら5軒も入るほどの巨大な物件で、その大きさから商店街へ与える影響も大きく、雰囲気が一気に変わりそうな予感です。所長は、人懐っこい笑顔でひとを惹きつける野々垣賢人さん。建物の建築を担当するのは、建築士の中渡瀬拡司さん。ふたりで「きんつぎ」という会社を立ち上げ、ここで骨をうずめるつもりなのか!? というぐらい根を張って、頑張っています。おふたりのこと、この場について、たくさんお話をお伺いしましたヨ。 1980年代、高級洋装店として名を馳せた「ヴィーナス」「せと末広町商店街」にあり、そのなかでも、ひときわ大きい元人気洋装店「ヴィーナス」。おばあちゃん世代にとっては、憧れの的で、オーダーメイドでつくる洋服は、大変な人気を博していたという。当時は近くに映画館やキャバレーもあったそうで、やきものの産地として仕事があふれ、商店街は大いににぎわっていた。あれから時が経ち、人通りがちょっと寂しくなったのち、ここ数年ですこしずつ持ち返している。そんななか、長らくシャッターが閉じていた「ヴィーナス」はどうなるんだろう?巨大な店舗ゆえに通りがかるたび、行方が気になっていたある日、ここの物件を購入した! という話を聞き、本当に驚いた。その人物が「きんつぎ」の野々垣賢人さんだった。所長・野々垣賢人さんとは?野々垣さんは、ちょっと変わった経歴の持ち主だ。出身は瀬戸市のお隣・尾張旭市。バイクや車を触るのが大好きで、最初の就職先は「愛知日産自動車」で、車の修理をする技術職の仕事をしていた。けれども、4年ほど働いたのち、雑念がわく。一生、これを続けていくのか? 工場長になれるのか? そんなことを考えていたある日、車に塗る色を間違えるぐらいのミスをしてしまう。そこで、これはダメだ! と一念発起。通っていた高校が建築学科だったことを思い出し、建築業界に飛び込むことに決める。改めて学校に通い直すも、実務は身につかない。そこで、インターネットで「名古屋」「設計事務所」で検索し、トップに出てきた設計事務所に連絡を取り、働きながら勉強させてもらうことになった。その代表が、建築士の中渡瀬拡司さんだった。中渡瀬さんは、三度のGOODDESIGN賞授賞をはじめ、いくつもの受賞歴を持つ設計士として、住宅や集合住宅などの設計を手がけている。そんな中渡瀬さんから見て、野々垣さんは、残念ながら設計にはあまり向いてるようにはみえなかった。それよりも、断然、営業向き。野々垣さんの年齢が20代後半にさしかかっていたこともあり、早めに伝えたほうがいいと、転職をすすめた。その転職先が建築と不動産のあいだを追求する、ちょっと変わった「創造系不動産」という会社だった。素直な野々垣さんは、そのすすめに従い、東京へと旅立っていった。会社では、設計をすることはなく、建築士のみなさんと日々、話をしながら、建築のデザインが不動産にどう影響するのか? 家賃をどうしたらあげられるのかなどを考え、過ごしていた。元上司と会社を立ち上げるそれから時が経ち、中渡瀬さんは、東京のとある大地主さんに気に入られ、俺の持っている土地全部設計させてやるよ! と、手がけることになった。ただ広大だったため、地域づくりからしないと、いつか価値がしょぼんと下がってしまう気がした。そこで40歳のとき、その想いに応えるべく、地域づくりを学ぼうと、東京の大学院に通いはじめる。その頃から、ふたりは再び連絡を取り合うようになり、東京で会い、話をするようになる。そこで中渡瀬さんが目にしたのは、東京へ行っても、相変わらず元気な野々垣さんだった。その姿を見て、一緒に会社を立ち上げようと誘った。「僕は、設計に集中したいので、とにかく人と話をしなくてもいいポジションが望ましかった。いつも笑顔のこやつがいれば、“外交”をせずに、生きていける(笑)。僕が話したように、きちんと話してくれる。なおかつ、一般のひとに伝わるような言葉に変えてくれるんです」と中渡瀬さん。こうして、2021年5月に「株式会社きんつぎ」は誕生。野々垣さんは、会社の顔として、CEOに就任した。ビジョンは、地域の豊かな暮らしが持続するための仕組みを創ること。不動産や建築の専門性を活かした地域づくりに取り組むことに決めた。なぜ、瀬戸なのか?会社を立ち上げた当初、野々垣さんは東京に住んでいて、東京でバリバリ仕事をする気満々だった。それが中渡瀬さんから、拠点は瀬戸と告げられた。「瀬戸ですか!?」驚く野々垣さんをよそに、中渡瀬さんは「僕自身がどこかの地域に関わるようなお仕事をしていきたいなと思ったとき、都会だと肌感もってやれない」と。さらに瀬戸の商店街はポテンシャルが高さ、古い街並み、物件が集中していることにポテンシャルがあると説得。中渡瀬さんの奥さんが瀬戸出身で、名古屋から瀬戸へと引っ越し、すでに新たに家も購入していた。野々垣さんも、最初こそ驚いたものの、尾張旭出身なので、身近なまちだった。自宅の改装をしていると、そのことを知った古くからの知り合いから、声がかかる。「瀬戸で購入したビルを、どうしたらいいか一緒に考えてもらえませんか?」それが「ビル与白」という長屋ビル。シェアオフィスと、飲食店を開きたいひとで、初期投資ができず困っているひと向けに、営業許可付きのシェアキッチンが利用できる。現在は、利用者がマルシェ出店時の時に利用したり、「与白」で1日店長として、お店を開いている。まだオープン前の何も決まっていないとき、ふたりは、瀬戸のひとに話を聞き、何が求められているのかを探っていった。その結果、何かを生み出し、一歩を踏み出したい“ツクリテ”が多いということに気づく。そこで現在の形になった。ここでも人とのコミュニケーションが得意な野々垣さんが、運営にも関わり、利用者の募集やビルの広報もサポートし、徐々に人が集まるようになっていった。「ビル与白」を利用して、日替わりでお店をオープンするひとが増えるなか、もうすこし長期で、お店を持てるようになれば、瀬戸をもっとおもしろい場所に出来るのではないか? と考えるようになっていった。そんななか、ご縁あって、「ヴィーナス」という物件を手にいれる。「地域をつくっていきたいなら、まずは自分たちが地域に対して何が出来るのかを研究しなければいけない! 自腹を切っていないと、信用度に欠けるかなという思いがありました」(中渡瀬さん)「妄想発酵、街の賑い醸造」をめざす拠点へ1階には、営業許可付きのキッチン4つを用意し、飲食店が最大4店舗まで出店できるように。11月から正式に募集もはじまるとのこと。同じフロアにギャラリーもつくり、瀬戸のツクリテによる作品が並ぶ予定。写真は、野々垣さんが“広場”と呼ぶ空間。若い学生たちの「集まれる場所がほしい」といった要望から、公園のように誰でもくつろぐことができるようにしている。こちらは吹き抜けをつくり、上がることができる2階。写真はコワーキングスペースができる予定の場所。瀬戸は、wifiが使えるカフェがとてもすくないので、貴重です。ほかにも、教室として利用できそうなスペース、工具が借りられるDIYシェア工房、物々交換スペースなど、たくさんの用途の部屋づくりが予定されている。「僕たちがやりたいことは、自分のやってみたい“妄想”に対して、チャレンジをする人が増え、その人たちが助け合える環境ができること。賑わいとは、毎日でなくても多くの日がハッピーに暮らせる状態です。ここに来ると、人やモノ、何かしらの出会いがあるんだよね、という認識が広がることで、賑わいが醸造されていったらいいですね!」(野々垣さん)ここが誕生して、うまく機能しはじめたら、本当におもしろいひとがまちに増えるだろうな、という気がしています。だからこそ、編集部がある「ますきち -宿泊・喫茶・土産・案内-」代表の南慎太郎は、突如、業務提携させてもらうことを決めました。ほや子自身も、大好きな瀬戸のレトロな街並みを残し、お店が増えていくには、おふたりの力が必要だなと思っています。 目標額650万円でクラウドファンディングに挑戦されています。よかったら応援してあげてくださいね!!!