その出会いは、あまりにも突然で衝撃的だった。2009年11月某日「うまい物、食べに行こう。」同僚に誘われて訪れたのが瀬戸市のうなぎ屋だった。私が当時住んでいたのは、同じ愛知県内とは言え、車で1時間以上走ってようやく瀬戸に到着。車から降りると辺り一帯が甘く香ばしい匂いに覆われていた。嫌な予感がした。同僚の後を追うと着いたのは果たして、うなぎ屋だった。やがて毎週食べに通うのだが、当時私はあの食感と小骨が苦手で、うなぎが嫌いだったのだ。狭い店内に入るとモウモウと煙が立ち込め全身が燻されてゆく。一刻も早く店の外に出たかった。とは言えお腹はペコペコ。思い切って出てきたうなぎにかぶり齧りつく。!!!何だこれは! 外はブリンッ、中身はジューシー。焦げ目が付くまでしっかり焼かれた肉厚のうなぎは、しっかりと甘さの効いた濃い目のタレと相まって美味しい。世の中にこんな美味しい食べ物があったのか! 私のうなぎ感が180度変わった瞬間だった。この美味しさが忘れられず、何度も食べに行った。数ヶ月に一度が毎月になり、いつしか毎週通うようになっていた。うなぎを食べるために早朝に並び、順番を取ってから食べるまでの間、瀬戸の街をグルグル歩き回った。思い切って懐に飛び込むと、適度な距離感で受け入れてくれる街の人や、瀬戸本業窯や尾張屋などうなぎ以外に「瀬戸の好き」ができた。地方都市でありながら新しい事や異質な存在を受け入れる気風も好きになった。気が付けば街の活動に参加するようになっていた。そして衝撃の出会いから干支が一周した2021年、仕事が完全に在宅勤務に変わったのを機に、大好きな瀬戸に移住した。あの日うなぎを食べてなかったら……この連載では瀬戸市のイベントを中心に街のアレコレを旅人や住人での視線、時には内部からの視線で綴ります。